ショートエッセイ#13「エッセンシャルワークってなに?」

エッセンシャルワーカーを守れ!そんな声を聞きませんか。
コロナ感染の機会がないとは言えない職場で、市民生活のために働いてくださっている方々には大感謝です。
しかしなんだか好きになれない言葉です。エッセンシャルワークじゃない仕事なんかあるのだろうか。エッセンシャルワーカーだったら休みも返上し、徹夜もいとわずに働かなければならないのだろうか。エッセンシャルワーカーからほど遠い高齢者なんぞは静かに隠れてろ!そんな意味なんだろうか。

一体どこからこんな言葉が出てきたのだろうか。ウイキペディアによると、英国で社会インフラ維持に必要不可欠な職業の労働者と不要不急な労働者を二分化し、具体的なリストを英国政府が示したことに由来するということです。そんなことは知らずに始めてこの言葉を聞いたとき、人類が生きのびるために最小限必要な仕事がエッセンシャルワークだろうと思いました。

アフリカタンザニアのハッザ族は原始時代以来の狩猟採取生活を現代まで守っている種族です。ハッザ族では、生後数年間にかなりの子供を失いますが、それ以後の生存率は高く、45歳での平均余命は20歳を超えるということです。注目すべきは閉経後の女性の生存率が高い。野生動物ではこのようなことはなく、死ぬまで子供を産み続ける。逆にいえば産めなくなったら死ぬ。閉経後の生存は人間に特長的なことですが、原始時代以来の生活を続けているハッザ族で、すでにその特長が示されている訳です。

それではお婆さんのなくてはならない役割とはなんだったのだろうか。いろいろ研究があるようですが、有名なのはGrandmother hypothesis(おばあさん仮説)という仮説です。お婆さんが人類の存続に大きく貢献してきた。それは孫世代の保護や教育を通じての寄与だ、という仮説です。ハッザ族は20~30人の小集団で暮らしていて、医師も薬剤師も看護師もいない。薬になる植物や体によい食生活について、健康について、それなりの知識を持ち、そして互いに助け合う能力をもった若者が育っている。若者達が狩猟採集にかかり切っているとき、家庭でのお婆さんの寄与が欠かせないというのです。

現代の都会生活で医療や食品・日用品の流通網などで働く方がエッセンシャルワーカーだといっても誰も不思議がらないでしょう。でも少し長い目でみれば、お婆さんは欠かすことのできないエッセンシャルワーカーで、そのお婆さんと切り離なされて育ってきた若い人達の苦しみがここかしこに吹き出しているのがいまの日本なのかもしれません。
エッセンシャルワーカーの皆様、どうか休みをとって、健康を守り、ご自分の生活を忘れずにお過ごし下さるように。わが国ではワクチン開発研究者はエッセンシャルワーカーには入っていなかったようです。とすれば当面、自分で感染を防ぎ、仲間で助け合って命を守るしかありません。その知恵を授けるのもお婆さんなのです。
お爺さんも加えていただけますかね。

20210524 松村記

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