ショートエッセイ#20「コロナと栄養」
「コロナ接近戦で食事・栄養をどう役立てる?」
コロナ禍第7波。8月中下旬、横浜市内での市中感染率が週間0.7%に対して、家族内で感染する確率は10~40%だそうで、いかに家庭感染率が高いか驚きます。 感染を予防できたり、感染しても軽く済むような食事や栄養はないのでしょうか。
まず公的機関の見解を検索すると: 消費者庁のニュースリリース(20210625)では特定の健康食品を摂取することによる新型コロナウイルス感染や重症化の予防効果が実証されているものはありません、とのこと。 また(国)医薬基盤・健康・栄養研究所からの健康食品の安全性・有効性情報(20220823)では現時点で、新型コロナウイルス感染症に対する予防効果が確認された食品・素材の情報は見当たりません、と総括しています。新型コロナウイルス感染症対策本部からの20220617報告書にも栄養・食品にはなんら言及していません。
今度は栄養が重要だと指摘している方を検索してみましょう。香川栄養学園香川靖雄研究所長が発信されたエッセイ「実践栄養学で新型コロナウイルス感染症に対する免疫力を改善、20210518」が目にとまりました。 香川所長は栄養要素のなかでも特にビタミンDが不足しないように注意を喚起しておられる。 根拠として、ビタミンDが新型コロナウイルス感染の予防と症状緩和効果を示した臨床疫学研究例にも触れておられるが、加えてビタミンDが免疫細胞を活性化する働きについての科学的知見を紹介し、さらに最近の日本人にはビタミンDが不足しがちであることを指摘して、総合的にわが国での新型コロナウイルス感染についてビタミンDが予防、あるいは症状緩和効果を示すだろうと予想しておられる。
臨床疫学研究から新型コロナウイルス感染の予防あるいは症状緩和に対してビタミンDに効果があるとするものも効果がないとするものもあり、確証されていないとして評価しないか、あるいは証拠だては不十分だとしても、傍証を含めてその可能性は高いと予測するか、どちらも科学的考察として間違ってはいないでしょう。
それではあなたはどうします? このような見解の相反は、いままで幾度も繰り返されてきました。たとえば巨大台風とか高気温といった現象についても、多くの科学者が警戒する中で、気象庁は最近まで50年来とか100年来のといった表現で、正常な変動の範囲内にあるとの立場で報道してきたように記憶します。範囲外とする確実な根拠が見いだせなかったに違いない。しかし2020年であったかと思うがコンピューターによる精密な計算によって、正常な変動の範囲内での現象として説明することはもはや困難との気象研究所からの発表があって、ついに公式な報道でも地球温暖化によって起きている現象であることを容認した形になったようです。
科学は日進月歩で、そうこう言っている間にも、ビタミンD研究は進歩しています。骨形成への効果は古くから知られて来たことですが、免疫系への作用を認めた論文は私の知る限り2003年が最初で、以来この分野の研究は急展開していますが、一般書でこの進歩に触れているものはまだわずかです。またビタミンDのうち、キノコ由来のビタミンD(VD2)と動物性のビタミンD(VD3)とで免疫系への働き方が違うことが分かってきたのは、これも私の知る限り2020年から、さらにヒトのある種の免疫細胞への作用が、D3には認められるがD2にはほぼ認められないことを示す実験結果が報告されたは今年です。
とすれば、日本食品標準成分表にもあるようにD2と,D3とを区別せずにビタミンDとして進めてきた臨床疫学研究で感染防御効果を認めなかった場合があったとしても説明がつくかもしれません。
科学研究が瞬く間に問題に回答をだせるとは限りません。それでも次々に新しい知見も加わります。その成果をいかに読んで、将来の損失を最小に、成果を最大にと図りつつ生活に活用するか。相反する見解に目を配りつつ貴方自身が判断していくしかありません。その努力があなたやご家族の健康を最大限に生かすことになるでしょう。 hascrossがそんな貴方を支援できれば幸いです。
20220828 松村記