ショートエッセイ#24「糖質・脂質の過剰摂取からどう脱出する?」
糖質・脂質の過剰摂取からどう脱出する?
羊羹、和菓子、洋菓子、アイスクリーム--、甘味のお菓子は一時のくつろぎに欠かせません。オニギリ、ドーナツ、ポテトフライ、菓子パン、など手軽なスナックはファストフードやコンビニの上位売れ筋を独占しています。
研究によると、人間には油脂と糖質を組み合わせた食品をほかのどんな組み合わせの食品よりも高値で買ってしまう本性があるとか。結果として、最愛の子供に与えた糖質・脂質リッチな食生活習慣のつけを本人が大人になってから払うという流れを押しとどめることがなかなかでないように見えます。
そこでさまざまな人工甘味料や加工油脂が開発され、現在も大量に使用されています。詳細は省略しますが、これら人工的な食品素材については問題点が指摘されているものが多数あります。許可になっているのになにが問題なのか。食品の安全性は実験動物を用いて確かめられる場合が多いので、寿命の長い人間のような生物での安全性は何十年という時間が経なければ分からないこともあるわけで、その間は危険性が証明できないということで禁止することもできずに販売されていることがあるのです。そこで市民としては、安全性に問題が指摘されているかどうかを調べて購入することが奨められますが、なかなか大変なことです。
当店は合成甘味料は一切使用しておりません。合成甘味料を使わなくても甘味のある天然素材を選ぶことで解決できるとの考えからです。天然の甘味成分のなかでは、人体にも含まれる天然の炭水化物であるキシリトールとイノシトール、モグロシドという甘味成分を含む羅漢果の抽出物を使用しています。羅漢果については、安全性試験がなされていて高く評価されているものの、完全ではないとの指摘もあり、注意深く使用しています。
天然物由来の甘味料であっても、砂糖、果糖液糖の使用は避けています。理由は砂糖にも果糖液糖にも、果糖(フルクトース)を多量に含んでいるからで、果糖は身体に入ってからの反応性が、澱粉に由来するブドウ糖にくらべて強く、蛋白質と結合してグリケーション生成物(ヘモグロビンA1Cなど)を作りやすい性質があり、また妊娠中の胎児への影響が心配されることなど理由からです。
当店ではすべてのお菓子類について糖質を減らし、総体的に蛋白質や繊維質を増やして、間食にも栄養バランスを達成する方向で工夫を重ねています。それらの工夫のなかで最近重視しているのが食品にもともと含まれている澱粉質を糖化することによって甘味を引き出す工夫です。糖化には糖化酵素や麹菌が使えます。澱粉質が糖化されるときにできる糖は麦芽糖という種類の糖で、この糖は果糖にくらべて酸化されにくく安定で、甘味は鋭くはないが、なにか昔を思い出させるような柔らかな甘みがあります。麹小豆や麹大豆は砂糖なしで当店の発酵あんこや発酵黒豆となり、お菓子に取り入れています。また麹タマネギは料理の下味になります。
脂質としてはバターとココナツ油を最少量使用し、一般のサラダ油など不飽和脂肪酸を多量に含む植物油は使用していません。バターやココナツ油は中鎖飽和脂肪酸を多く含み、生体内で代謝されてエネルギーになりやすく、空気中の酸素で酸化されて変質することの少ない利点があります。その他栄養学的にいえば、ω3不飽和脂肪酸、ω6不飽和脂肪酸が必須ですが、酸化しやすいので付け油としてのみ食事に供しています。
糖質の過剰摂取からどう脱出する? 当店の戦略は甘い物を食べないということではありません。食べます。結構沢山食べ
ます。しかし食べる甘みの一部は天然甘味料に置き換え、大部分はご飯などの澱粉に由来する炭水化物です。食べ過ぎたときにはご飯を減らします。また糖質と蛋白質やビタミン類、繊維質などの栄養成分を一緒に摂取するよう注意しています。勿論これらの栄養成分は食事で十分摂取されますように。そして皆さんの最愛のお子さんやご家族にも、そういった食品を選択されたり、あるいは手作りで差し上げることをお勧めします。
2023/06/29 松村外志張